【ブランク加工】とは?板金加工の基礎と種類方法選びのポイントを徹底解説

「板金加工を依頼したいが、専門用語が多くてよくわからない」
「"ブランク加工"という言葉を聞いたけど、具体的に何をする工程なの?」
製品開発や設計において板金部品を取り扱う際、このような疑問を感じたことはありませんか?
「ブランク加工」は、あらゆる板金製品の品質と精度を左右する、非常に重要な最初の工程です。
この記事では、板金加工の出発点である「ブランク加工」に焦点を当て、その意味や目的といった基礎知識から
代表的な加工方法の種類と特徴、そして目的に合わせた選び方のポイントまで、専門家の視点で分かりやすく解説します。
この記事を読めば、ブランク加工の全体像が理解でき、業者との打ち合わせもスムーズに進められるようになります。
目次
ブランク加工とは?板金加工の第一歩
ブランク加工とは、1枚の大きな金属板(材料)から、製品の展開図の形状に合わせて、目的の形を切り出す工程のことです。
英語の「Blank(空白、空の)」が語源で、まだ曲げや溶接がされていない、平面状の部品を「ブランク材」と呼びます。
料理で例えるなら、野菜の皮をむいて、レシピに合わせて切り分ける「下ごしらえ」の工程にあたります。
この下ごしらえが正確でないと、その後の調理(曲げ・溶接)がうまくいかず、最終的な料理(製品)の仕上がりに大きく影響します。
なぜブランク加工が重要なのか?
ブランク加工は、板金加工における全ての精度の基礎となります。
ここで切り出された部品の寸法や形状が正確でなければ、その後の曲げ工程でズレが生じたり
複数の部品を組み合わせる溶接工程で隙間ができたりと、様々な不具合の原因となります。
つまり、最終製品の品質は、このブランク加工の精度にかかっていると言っても過言ではありません。
そのため、製品に求められる仕様やコスト、生産数に応じて、最適な加工方法を選択することが極めて重要になるのです。
【種類別】代表的なブランク加工の方法と特徴
ブランク加工にはいくつかの方法があり、それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。
ここでは、特に代表的な2つの加工方法について、その仕組みとメリット・デメリットを解説します。
1. レーザー加工
【仕組み】
高出力のレーザー光をレンズで集光させて非常に小さな点に照射し、その熱で金属を瞬時に溶融・蒸発させて切断する加工方法です。CADデータに基づいてレーザーヘッドを動かすことで、自由な形状を切り出すことができます。
- メリット
- 複雑な形状に対応可能: CADデータ通りに加工できるため、曲線や複雑な輪郭の加工が得意です。
- 金型が不要: 金型を作る必要がないため、初期コストを抑えられ、1個からの試作品製作(多品種少量生産)に最適です。
- 高い加工精度: 熱影響が少なく、切断面が滑らかでバリ(切断時にできるトゲ)の発生が少ないため、高精度な仕上がりが期待できます。
- 設計変更に強い: データを修正するだけで容易に形状を変更できるため、設計変更が多い試作段階で非常に有利です。
- デメリット
- 厚板の加工には限界がある: 加工できる板厚はレーザー加工機の発振器の出力に依存します。
- 加工速度: 直線的な切断では、後述するシャーリング加工に比べて時間がかかる場合があります。
2. シャーリング加工
【仕組み】
「シャー(はさみ)」という名前の通り、大きなハサミのような上下2枚の刃で、金属板を挟んでせん断(切断)する加工方法です。
- メリット
- 直線切断が非常に高速: 材料をセットして刃を降ろすだけなので、直線の切断スピードは他の方法より圧倒的に速いです。
- コストが安い: 大量の材料を同じ寸法で直線的に切り出す場合、最もコストを抑えられる方法です。
- デメリット
- 直線カットしかできない: 構造上、直線的な切断しかできず、複雑な形状の加工は不可能です。
- 切断面の品質: 切断面には「バリ」や「ダレ(丸み)」が生じやすく、精度はレーザー加工に劣ります。後工程でバリ取りが必要になる場合があります。
どう選ぶ?加工方法の選び方のポイント
では、これらの加工方法をどのように選べばよいのでしょうか。
目的別に選定のポイントをまとめました。
ポイント1:形状の複雑さで選ぶ
- 複雑な曲線やデザイン性の高い形状 → 「レーザー加工」
- 単純な四角形や直線での切り出しのみ → 「シャーリング加工」
作りたい製品の形状が、選定の第一の基準となります。
ポイント2:生産ロット数で選ぶ
- 1個〜数百個程度の試作・少量生産 → 「レーザー加工」
金型が不要なレーザー加工は少量生産に、金型段取り後の生産性が高いタレパンは大量生産に向いています。
ポイント3:求められる精度と品質で選ぶ
- 高い寸法精度や滑らかな切断面が必須 → 「レーザー加工」
- 標準的な精度でコストや速度を優先 → 「シャーリング加工」
製品の用途や、後工程との兼ね合いで求められる品質レベルに応じて選択します。
試作板金におけるブランク加工の重要性
特に「試作板金」の分野において、ブランク加工の方法選びはプロジェクトの成否に直結します。
試作品は、設計変更が繰り返されることが前提です。そのたびに高価な金型を製作していては、コストも時間もかかりすぎてしまいます。
CADデータさえあれば、すぐに形状を反映できる金型レスの「レーザー加工」は、まさに試作品製作のためにあるような加工方法だと言えます。
また、正確なブランク加工は、その後の曲げ工程や溶接工程の精度を保証するための大前提です。
試作品だからこそ、設計通りの正確な寸法で評価・検証を行う必要があり、ブランク加工の品質が極めて重要になるのです。
まとめ:最適なブランク加工で、高品質なものづくりを
今回は、板金加工の最初の関門である「ブランク加工」について解説しました。
- ブランク加工は、板金材料から製品の展開図を切り出す、ものづくりの土台となる工程。
- 代表的な方法には「レーザー加工」「シャーリング加工」があり、それぞれに長所・短所がある。
- 「形状」「ロット数」「品質」の3つの軸で、目的に合った最適な加工方法を選ぶことが重要。
- 特に試作品製作においては、柔軟性と精度に優れたレーザー加工が強みを発揮する。
製品に合った適切なブランク加工を選択することが、後工程の作業性を高め、最終的な製品品質を向上させる鍵となります。
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「この図面、レーザーで加工できる?」「試作品を1個だけ頼みたい」など、ブランク加工や試作板金に関するお悩みは、ぜひ一度当社にご相談ください。